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●社史づくりの意義を考える

  近年、企業の周年記念事業として社史の刊行が広く行なわれるようになりました。そうした節目に制作した社史を贈呈しあうことが、企業間交流の新たなトレンドにもなってきているようです。
 しかし、社史づくりの意義は何かと考えてみると、これは分かったような分からないような問題です。社史をつくったからといって会社にとってのメリットがすぐに目に見えて現れるわけでもありませんし、社史をつくらないからといって日々の企業活動に何か不都合が生じるというものでもありません。
 しかし、では無意味かというと、そうではない。それどころか、何となく漠然とではあるが「とても大きな」意味があることを、誰しも察せられるのではないでしょうか。社史づくりとはすなわちそうしたものであり、その目的を功利的なメリットに集約できない、すぐれて「人間的な」意味のある作業であるということができるでしょう。


●社史は企業の「命の記録」

 社史は大きな会社が「箔付け」のためににつくるものだとか、その歴史を都合良く記述するものだとかいう意見は昔からあります。国の歴史書ですら為政者の意向で事実を脚色したり隠蔽したりしてつくられているというのが定説ですし、歴史書はそれをつくる人の立場で記述されるものであることは認めないわけにいきません。
 けれども、そういうことをもふまえた上で、社史の本質は企業の「やむにやまれぬ命の記録」であり、「言葉にならない意思」を最大の動機として「書き残される」「人間的な価値のある」ものであると当社は考えています。
 その動機は、大企業に劣らず中小企業にも当然あるものです。大企業には大企業の、中小企業には中小企業の「やむにやまれぬ命の記録」が書き残されるべきと当社は考えます。
 人はなぜ「書き残す」のか――これは考えていけばいくほど興味深い哲学的なテーマであり、また「言葉を持った生物の生理」という科学的なテーマでもあり得ます。答を出すより考え続けることに価値のある問題であるといえるかもしれません。
 私どもは、こうした基本認識に立って、企業様の求められるものをより深く理解し、より深く表現できるようにと努めながら、社史づくりのお手伝いという仕事に日々取り組んでおります。


●社史の「実用的価値」

 社史づくりに取り組むときには、上記しましたように、まずその「言葉にならない志」をはっきりと自覚しておきたいものです。
 ……その上で、社史の価値・効用について実用的な角度からもう少し具体的に明文化したかたちでまとめてみますと、大略次のようになります。   
 
@未来への道しるべとして
 温故知新……古いことをたずねる精神は、そのまま新しいものを探求する心につながります。あらゆる歴史研究が未来のためにあるように、社史づくりは会社の明日への新たな道標をうち立てる営みです。

A社員教育の資として
 社員、特に若い社員にとって、自社の歴史への深い理解は仕事への意欲と誇りの源泉となります。その意味で社史は絶好の社員教育のよりどころといえます。

B歴史を築いた先人や取引先への謝恩に
 創業期から社業発展につくしてきた先人の労苦をしのび、また、長く貴重なパートナーシップを保ってきた取引先や関係者の人々に謝意を表すため、社史はこの上ない記念品となります。

C好機ををとらえた強力なPR材に
「創業○○周年」「会社設立○○周年」「創業者生誕○○周年」などの「節目」は、自社を改めて各方面に広くPRすべき絶好の機会です。このチャンスを生かすためにも、社史は最も効果的なツールとなります。
 
 他にも、「業界史、ひいては日本産業史としての意味がある」「経営上のヒントが得られる」「実際の業務に資料として活用できる」などのメリットも挙げられます。このように、会社の歴史を「本として残す」ことには測り知れない深い意義があるのです。


●社史の歴史と最近の傾向  

  明治中期に日本が産業近代化の道を歩みはじめてからほぼ1世紀になりますが、太平洋戦争以前は社歴の長い企業の絶対数が少なかったことなどから社史が発刊されることはあまり多くありませんでした。戦後の復興期を経て、高度成長期に入った昭和30年代からは戦前創業の会社が社史を刊行するケースが増えはじめ、昭和50年代以降は、戦後創業会社がこれに加わって、社史の発刊数は飛躍的に伸びました。さらにオフセット印刷の普及や電算写植の発達、最近ではDTPの進展で、社史の制作は企業規模の大小を問わず、周年事業の代表的なものになってきています。
 以前は社史といえばいかめしいイメージで、箱入りの豪華本というのがほとんどでした。これは企業の堅実さや伝統の重みをアピールすることが重要視されたからです。今でもそのスタイルが主流ですが、時代の移り変わりとともに新しいコンセプトにもとづく作品も数多く現れてきています。
 いわゆる重厚長大型から軽薄短小型への産業構造の転換後は、一般的な活字離れの傾向も手伝って、文字よりもむしろ写真などの図版を多く取り入れ、製本も親しみやすい並製本で、ページ数もあまり多くないものにする傾向が出てきています。また、その反面、やはり文字中心で「じっくり読まれる」ことを求めるスタイルもあり、この場合はB5判などの大型本ばかりでなく、上製本でもA5判や四六判などの中・小型本も採用されています。いずれにせよ、以前の記録中心の考え方から、リクルート用の会社案内や社員教育、また広く企業PRに生かすための実質的なメリットが求められる傾向になっています。


社史づくりへの着手――「社内向け」か「社外向け」か(牧歌舎方式)  

  社史の基本的な組立は、「口絵」に始まり、経営トップの「挨拶文」、取引先などからの「祝辞」と続き、メインの部分である「通史」、座談会などの「企画ページ」と展開したのち(「企画ページ」が「通史」より前に来る場合もあります)、業績推移グラフや組織の変遷図などの「資料編」および「年表」で締めくくり、最後は「編集後記」「奥付」で終わる形になります。
 こうした基本形を一応認識した上で、制作開始にあたって「企画」を行うわけですが、ここでまず最初に決めなければならないのは「どちらかといえば社内向け」「どちらかといえば社外向け」ということです。「両方とも同等に」という選択肢も考えることはできますが、実際にはうまくいきにくいものです。「内向き」か「外向き」かは、原稿内容や編集の仕方、製本形式や装丁にまで関わってくる最も基本的で重要なコンセプトになりますので、よく検討して決定する必要があります。(「内部向け」「外部向け」を必ず第一番に検討するこの「牧歌舎方式」は効率的な企画立案方法として現在広く普及・定着してきています。――「社史について考える」〈「牧歌舎方式」の意味〉をご参照ください)
 この「基本コンセプト」がどうなるかによって、例えば、過去の出来事をオーソドックスに記録した社史にするのか、それとも事業記録や社業PRなどに目的を絞ったユニークな作品にするのかというような方針や考え方の違いが出てくることにもなります。装丁デザインも、簡素で親しみやすいソフトカバーにするか、永久保存にふさわしい美麗で堅牢な化粧箱入りハードカバーにするかの決定などに、この基本コンセプトが大きく影響してきます。
 基本方針が決まると、社史づくりで最も大きな作業である本文原稿作成に着手することになります。その方法はいろいろ考えられますが、一般的に言えば、専門の年史ライターを起用し、緊密な連携の上に立って原稿作成作業を進めていくのが理想的です。
 窓口となる社内担当者の方は、社史に記述される各項目について必要な情報ソースと年史ライターとの間の橋渡しを周到に行うことによって、充実した社史づくりを推進することになります。資・史料の手配、取材手配のほか、必要でかつ可能な場合には、重要な項目については詳しい社員・OBからレポートあるいは手記を提供してもらうのも有効な方法です(これらは最低箇条書き程度の簡単なメモ程度のものでも可。これがあるとないとでその後の取材と原稿作成の能率が全然違ってきます)







●社史づくりを成功させる‘八原則’

「社内向け」か「社外向け」かの基本スタンスを最初に決める(牧歌舎方式)
   五分五分というのは現実には困難。四分六とか51対49でもよいから優先スタンスを決めること。
編纂委員会は2名以上5名以下とすること
   編纂委員は多すぎないこと。結束こそ命。
編纂作業は年表づくりから始めること
   着手しやすく方向が見えやすい年表づくりから始めるのが正解。
他社、他団体の社史、記念誌を参考にすること
   編纂委員全員でなるべく多くの作品に目を通し、企画の参考にする。
制作業者選定は同一条件で比較検討すること
   同一条件で複数業者から企画書・見積書を取り、疑問点は遠慮なく質す。
プロを徹底的に活用すること
   すべての段階で分からないことは専門業者にどんどん聞く。注文はどんどんつける。
原稿完成から本の完成まで最低4カ月の時間をとること
   最後の段階ではチェックの上にもチェックを重ねる。
心身の健康管理に意識的に努めること
   社史・記念誌づくりは長期戦。十分な栄養と睡眠、気分転換が「良い仕事」を生みます。





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