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社史・記念誌の参考事例集

  ――牧歌舎はこのような制作理念を持っています――


●今の人か未来の人か

 社史は今の人が読むばかりでなく未来の人が読むということを十分考慮に入れなければならない。むしろ歴史というものは未来の人に対して書かれるのが本質であり、書かれた歴史の当事者たちが読むためという目的は、本来非常に微々たるものにすぎない。
 未来の人、たとえば1000年先の人が今書かれた社史を読むのはどういう目的においてだろうか(ちなみに今から1000年前は紫式部に代表される平安朝女流文学の全盛期で歴史書としては『大鏡』がある)。いろいろなことが考えられるが、基本は彼らが良き世界を築くための参考にするのだと思われる。そうした場合に彼らが求めるのは正しく書かれた歴史にほかならない。
 手前味噌的な誇張、関係者だけでの盛り上がり、ストーリー的につじつまが合いすぎる話などは、彼らにとっては「割引材料の多い史料」とされるだろう。今の歴史研究者がそうしているように。彼らの「参考とすべき史料」から外されるようなものになっては最悪である。
 たとえ何らの表現主義的な「面白い」話法は見られずとも、正確な事実関係、重い真実が語られているものこそ未来において評価を受けるのだろうと思う。少なくともそういう姿勢の見られるものをこそ、未来の人は尊重するであろう。ましてや、現代に関する歴史は他にも多くのものが残るのであるから、他の史料に徴して信憑性の低いものはハネられるかもしれない。
 にもかかわらず、自己宣伝の満足やレトロ趣味の満足が社史に求められるケースのなんと多いことであろう。社史はその会社の孜々たる歩みを真面目に、地道に、敬虔に、シリアスに記述するのが基本である。最近は「面白い社史」「とか「読まれる社史」とかが言葉としてはよくいわれるのだが、そういうものを読んでみると露骨な自己宣伝や中途半端にウケをねらっただけのみっともないものが多い。社史はその会社のものであってその会社だけのものではないことを心すべきである。
 最近の歴史記述には、参考文献として社史が取り上げられるケースが多い(『朝日クロニクル週刊20世紀』1950年の巻、日経の『日本産業史』など)。社史の与える歴史学への影響は大きいのである。
 社史の読者は今の人たちよりも未来の人たちの方がはるかに多いのであることは、考えれば誰でも分かることである。



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