自費出版-社史・記念誌、個人出版の牧歌舎

エッセイ倶楽部

牧歌舎随々録(牧歌舎主人の古い日記より)

007. むこう向きの猫

孤高の野性を持するが故に
猫は人を愛さない
そうして、全てが眠る幻想の時間を
静かに、むこう向きになって
見つめている
危険な、高いきざはしの上から

そう
猫が愛するものは
危険なおのれの野性のみ
人間の目にもとまらぬ
凄まじい闘争の時を
ひっそりと身を丸めながら
その全身で夢見ている

そのような猫を
そのような猫として認める時
猫もまた わずかに人を認める
哀しみに満ちて
静かにその名を呼べば
見よ
かすかに涙を溜めた目で
猫は人を見上げる