自費出版-社史・記念誌、個人出版の牧歌舎

エッセイ倶楽部

牧歌舎随々録(牧歌舎主人の古い日記より)

081. 金持ちと貧乏人

 金持ちが立派で、貧乏人はつまらないものだとする考え方、感じ方こそ、じつは貧しさそのものである。そしてこの貧しさは、特に日本人において顕著であるように思われる。人間はそのような窮屈な思想にとらわれるべきでないが、金持ちと貧乏人の有利不利がはっきりしすぎるとそんな感覚をもつのも無理からぬことであって、それがまたますますこの窮屈な思想を定着化させていくのである。すなわち、この有利不利への不満を解消するには自らが金持ちになるべきだとする考えであって、それが果たせない場合には、やはり自分はつまらないものと自ら貶める結果になるのである。
 しかしながら、上記のような金持ちになるための努力というものは、貧しい考え方の上に立ったものであるから、心豊かな者はそうした努力には本来無関心なのである。無関心ではあるが、有利不利には不満なのである。自らの不利のみなら構わないのだが、家族の不利、また一般に貧しき者の不利などへの怒りをもつことは十分にあり得る。
 では、どうすればよいのか。貧しき思想の蔓延をどうやればくい止められるのか。そこが人類最大の問題である。

1999.06.08