2021年9月に牧歌舎より発売されたシャルル・ボードレール作/荻原足穂さん訳の『小散文詩 パリの憂鬱』書評が9月10日付の図書新聞に掲載されました。
本書はシャルル・ボードレールの『Le Spleen de Paris — Petits Poemes en prose』の全訳である。 19世紀最高の詩人シャルル・ボードレールは、今からちょうど二〇〇年前の一八二一年生まれ、没年は一八六七年(46歳)。ボードレールの詩作品といえば『悪の華』が有名であるが、それと並び立つのが散文詩『パリの憂鬱』である。50篇で成るこの散文詩集でボードレールが描いた人々は、奇妙な、しかし実に身近な感じをも抱かせる人々である。詩人はしばしば彼ら「弱い者、何もかも失った者、悲しみを持つ者、奇妙な者、謎の人、理解しがたい者、エニグマ」などを凝視し、同情を隠さない。また『人間のもつあらゆる形態の過大なうぬぼれ』に警鐘を発し、今日の言葉で言えば『格差』を問う。静かにかつ激しく、声高ではないその言葉たちは現代の我々の心を打つ。それら詩人が語る息遣いや表現も含めて、訳者は精細な熟読の上に立ち日本語で語る。さらに、隠しようもない詩人の心の揺らぎ示す言葉、散文でありつつ散文「詩」であること—その成り立ちを訳者は調べる。
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