西塚 修
木々の若葉がいつもより早く、そして、いっせいにその美しさを輝かせているようだ。また、可憐に鳴いたかと思う間もなく惜しまれながら去ってしまうウグイスが、今年は長く留まってその麗しい声を聞かせてくれる。このうららかな陽光につつまれた穏やかな日々はまさに欣々たり。
山野に出るがよい。そして燦燦たる陽光のもとで、清新な気を胸一杯吸うがよい。
相応な年はとった。よろこぶべし! 手を伸ばせば触れられるところに、共に喜びを分かち合える人が、共にいる。
寸評
行く春の中にふと初夏の気配を感じた瞬間の心の躍動が、鮮やかに表現されています。「相応な年はとった。よろこぶべし!」の一句には“健全な老い”を積極的に評価する強い哲学がうかがえ、短いながらも一つの生きるヒントが明瞭に示されています。