自費出版をめぐるトラブルが一部で社会問題になっています。自費出版の健全な発展を目指すNPO法人日本自費出版ネットワーク(以下、当ネットワーク)の会員である私たちにとって憂慮すべき問題であり、こうした事態が広がることは不幸なことで、避けなければならないことです。トラブルの多くは著者が自費出版業者と結ぶ契約とその履行過程で発生しています。当ネットワークでは、消費者である著者の権利擁護という観点から、自費出版を希望する著者と自費出版契約を結ぶ際に遵守すべき原則事項を、以下にガイドラインとしてまとめました。自費出版をお考えの方々は、このガイドライン遵守業者であるか、またはガイドラインに添った契約が行われているかを確認の上、ご相談やご依頼をされるようお奨めいたします。また、出版物の制作は著者と出版社の共同作業であり、双方が、作業進行上の連絡・情報提供について良好な信頼関係を保つための努力を行わなければならないこともご理解ください。
このガイドラインで自費出版事業者とは自費出版物の制作・販売業務を行う出版社(印刷会社など出版サービス会社を含む)をいい、著者とは個人・法人・団体を問わず自費出版費用を負担する側をいいます。
なお、このガイドラインは、当ネットワークが独自に制定するものであり、その遵守は個々の自費出版事業者が自らの責任において行います。したがって、当ネットワークが、このガイドライン遵守の強制や実行性の保証を行うものではありません。
このガイドラインは、自費出版事業者が著者と自費出版契約を結ぶ際の規範となるものとし、顧客(消費者)保護の精神に基づき、著者の要望に応え、このガイドラインを遵守することにより事業者の信頼を確保し、出版業界の健全な発展に資することを目的とします。
この「ガイドライン」は、NPO法人日本自費出版ネットワークが定め、管理するものとします。
この「ガイドライン」を遵守することを誓約し、当ネットワークが認定した事業者を「自費出版契約ガイドライン遵守事業者」(以下「遵守事業者」という)とします。当ネットワークは遵守事業者名を文書またはインターネットその他の方法で公表します。また、遵守事業者がこのガイドラインに明らかに違反した行為を行った場合には、認定を取り消し、その旨を公表するものとします。
遵守事業者は、販売に関する広告・勧誘活動時および著者からの自費出版制作の申込があった場合には「消費者契約法」および「特定商取引に関する法律」を守らなければなりません。
遵守事業者は、著者の要望に応じて、業務上の経歴、編集・校正、デザイン・製作、印刷・製本、配送、販売などに関する情報を開示しなければなりません。制作を外部に委託する場合も同様です。
業務上知りえた著者の個人的情報あるいは業務上の事項を、無断で業務関係者以外に漏洩してはなりません。個人情報保護法を遵守しなければなりません。
自費出版においては、通常の物販や製造と異なる商習慣やサービスが存在することから、以下の点を明確に説明しなければなりません。
自費出版を行う過程で制作あるいは販売にかかる費用の一部を出版社が負担する場合もあります。いわゆる「協力出版」や「共同出版」という呼称を使っているケースがこれらに該当します。この場合は、当ガイドラインでの純粋な委託制作・委託販売ではありませんので、著者と出版社の双方が費用の負担や権利関係を充分に了解した上で、適切な契約を結ばなければなりません。
重要な事項の連絡・伝達は、必ず、EメールあるいはFAXなど、保存され永続的な記録の残る形式で行うこと。またその記録を該当出版制作業務終了後1年間以上保存しておくこと。
実際の制作販売を開始するにあたっては、著者と自費出版事業者合意の上で自費出版契約を結ぶこと。その場合には、以下の点を明記または明確に説明すること。
日本国内において自費出版を事業とするものは、当ネットワークに誓約書その他の必要書類を提出し、理事会または運営委員会の審査を受けて、「自費出版契約ガイドライン遵守事業者」の認定をうけることができます。認定の取り消しも理事会の審査によるものとします。認定の方法、登録費用についての詳細は理事会で決定します。