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社史編纂・記念誌制作

風間草祐エッセイ集 社史とともに歩む社員の人生

102.思い至ったあの言葉−その6−「ガッツとがっつきとは似て非なるもの」 

更新日 2026年8月10日


 どのような職種においても、仕事に取り組む過程で、顧客、社内における上司や同僚など多くの人と接する場面が出てくる。そこで、それらの人々と良好な関係を築く上で、いつも必ずといっていいほど悩みの種となるのが、何をもってその人の人となりを判断すべきか、その人のどんな行動を見て評価すべきかという点である。45年余りサラリーマン生活を送る中で色々な人と接する機会があったが、仕事を通じて様々な人間を観察していくうちに、自分なりの人を見る眼が養われたような気がする。この言葉も、仕事上、様々な人と接する過程で、人となりを見極めるための教訓として、思い到った言葉の一つである。

 仕事に前向きに取り組んでいるということは、その人が積極性のある人であることに相違ないが、その行動が、組織全体のことを考えた行動なのか、はたまた、自分の利益のみを考えた功利的なものなのかを見極めることが大事である。前者に当てはまる人の場合は、たとえ、表舞台に立つことがなく、後始末やトラブル処理などの人の嫌がる仕事や、縁の下の力持ちの役割を任されたとしても、労力を惜しまず行動するはずである。一方、後者に当てはまる人の場合は、成果の上げやすい、美味しい仕事しかやらないなど、損得勘定で自分が利することのみを選んで振る舞う傾向がある。「ガッツ」と「がっつき」とは似て非なるものである。しかし、評価者である上に立つ人が、それを明確に見極められるかというと、そうとは限らない気がする。

 現役時代、同年輩の社員に、歯に衣着せぬものの言い方で、部下に厳しくあたる同僚がいた。今で言うパワハラまがいの言動から、少なからぬ人数の部下が精神的に追い込まれ体調を崩したり、それが長引き退職に追い込まれたりしていた。部署間で仕事の役割分担を決める場合でも、いつもこれっぽっちも損をしたくないという構えだったので、摩擦も多くけして社内で評判の良い方ではなかった。しかし、その人に対する時の上司の評価は、けして悪いものではなかった。その理由は、「彼は、嫌われても、摩擦を恐れず、やり通すやつだ」というものであった。その人のキレやすい性格を知る者としては、部下に対する叱責が理性的な判断からではなく一時的な感情のはけ口からであることは容易に分かったが、知ってか知らずか、その上司は「ガッツがある」と高評価を付けていた。

 このような、所謂「自己中」の上昇志向の強いがっついた人は、大なり小なりどのような組織や集団でも必ず見かけるが、そういう人の言動を判断する際には、その振る舞いが、当人の生まれ持った性格や地から来るものなのか、それとも対極にある、考えた末の自分の地を殺した意識的、理性的な配慮からくるものなのかを見極めることが肝心である。たとえ上に立つ者が分からなくても、叱責された部下の方は、それが単なる感情の発露から来たものなのか、部下のためを思っての言動なのかは如実にわかるものなので、たとえその激しさで一時的に部下を黙らせることはできても、長い目で見た場合、組織内での人間同士の信頼関係を築く上でのマイナス要因となることは間違いない。

 とかく上司は、本来自分が厳しく当たらなければならない立場であったり、自分が謝罪しなければならなかったりしたとき、それを肩代わりしてくれる人を欲するものである。汚れ役として泥をかぶってくれる人を傍においておきたいものである。その結果、たとえ、社内における評判が悪くても、それをやってくれる部下を優遇しがちである。案外、そんな見せかけに騙(だま)されやすく、自分に靡(なび)いてきてくれる部下が可愛いものである。しかし、人の評価というものは、対象とする人自体の個人的評価にとどまらず、その人が属する組織や集団において、尊ばれる行為とは何か、逆に、してはならない行為とは何かといった、モラルや不文律に関わってくるものなので、あくまで理性的に公平な眼で見ることが何より大事であるように思う。




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※風間草祐
工学博士(土木工学)。建設コンサルタント会社に勤務し、トンネル掘削など多数の大型インフラ工事に関わる傍ら、自由で洒脱な作風のエッセイストとしての執筆活動が注目される。著書に『ジジ&ババの気がつけば!50カ国制覇—働くシニアの愉快な旅日記』『ジジ&ババのこれぞ!世界旅の極意—ラオスには何もかもがそろっていますよ』『サラリーマンの君へ—父からの伝言—』『ジジ&ババの何とかかんとか!100ヵ国制覇』『すべては『少年ケニヤ』からはじまった: 書でたどる我が心の軌跡』『人生100年時代 私の活きるヒント』『風間草祐エッセイ集 社会編: —企業人として思うこと—』など。「社史」を完成した企業の記念講演の講師も受託する。【※「社史」に関して言えば、社員の仕事というものは必ずチームワークなのだから、協調性が保たれてこそ良い仕事ができるわけである。しかしメンバー各々は各々の考え方や価値観をもっているので、それがチームワークを阻害する場合は何らかの工夫が必要になるという話。そして一つひとつのの「達成」こそが小さな思いやりと協調の大切さを自覚させる機縁となって、人は成長していくのである。そのことが自ずと伝わる社史こそ良い社史であり、そういう会社こそ良い会社なのである。】