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社史編纂・記念誌制作

風間草祐エッセイ集 社史とともに歩む社員の人生

104.思い至ったあの言葉−その8−「人格者は球のような存在」 

更新日 2026年10月19日


 どんな集団や組織でも、複数の人間がチームを組んで行動する上で、常にリーダーとなる人の人格は問われるものである。ならば、世にいう人格者とは、どのような人を指して言うのであろうか。それを一言で表現するならば、人望があるということに尽きるのではないかと思う。その特性としては、高邁、清廉潔白で私欲がなく、理想が高く高潔で、博愛精神や慈悲の心があり、信念と謙虚さを兼ね備えている人ということになる。しかし、誰がそれを判断するのかとなると、人の評価はまさに人それぞれで、対象とする人が同じでも見る人によって異なり、極端に言えば、善人にも悪人にも映るものである。しからば、主観的でなくあくまで客観的な視点から見て、何をもって人格者と呼べるかということになるが、それは、性別、年齢、生まれも育ちも違うバックグラウンドの人が、違う切り口や異なる角度から見ても一目置く存在、信頼を抱くに足る人、共感層が広く人気のある人、例えていうならば、上から見れば円形でも横から見れば長方形である円柱のようではなく、どこから見ても円に見える球のような存在が、人格者であるということのように思う。ただし、ここで注意すべきは、外見上、誰とでも付き合えるからといって、八方美人と取り違えてはならない。八方美人は、誰からも悪く思われないように要領よく人とつきあうのに対して、人格者は、俯仰天地に恥じずというように、たとえ人が見ていなくても人知れず善行を積む表裏の無い人であり、両者は根本的に異なるものである。似非(えせ)人格者が、人に良く見られようと計算尽くで動いたとしても、人はそう容易く別人を演じられるものではなく、本来の姿は隠しようがなく自ずと地は出るもので、いくら装っても人格的に優れているかどうかは、すぐに見破られてしまうものである。人格とは、本来、短期的に仕上がるようなものではなく、長年月かかって身に付いたものが自然と醸(かも)し出てくるもののように思う。

 しかし、そういう人格者が社会において組織や集団の長と呼べるポジションに就いたり、功成り名遂げたりしているかというと、そうとは限らない気がする。むしろ、そういう人は組織における出世とは縁遠いい所に居ることが多いように感じる。傍(はた)から見れば 時として不遇だったりもするものである。勤めていた会社にも、組織の良心と呼ばれるような存在の同年輩の人がいた。技術的にも優れていたが、人当たりも良く、人望があり、自分も助けられたこともあった。勿論、客先からの信頼も厚かった。しかし、そういう人は、立ち回り方が上手いわけではなく、決して強靭な精神の持ち主というわけでもないので、善人であるがゆえに、悪い奴に騙(だま)されやすい面があるのも事実である。当時、10歳近く上に経営トップにすり寄り、とんとん拍子で出世していた人がいたが、何事にもフェアでなく、振る舞い方がえげつなく、周辺との摩擦も多かったので、経営トップの交代と共に失脚しそうになったことがあった。その気配を敏感に感じた本人は、こともあろうに、自分を退陣させてはならないという嘆願書(言わば、血判状のようなもの)を企て、その署名を集める役回りを社内で人望のあった同僚にさせたのである。その先輩と同僚は同じ専門分野の先輩と後輩だったので、同僚は断り切れなかったようであった。誰からも好感を持たれていた同僚にその作業をさせることにより、同情を誘い、自分の思いを遂げようとしたのである。

 どんな組織や集団にも、上昇志向が強く、自己中心的で、功利的な人はいるものであるが、そういう人は、自分を飾ったり、善人ぶったり、自分の評判を高めたりするために、組織内で人望のある人を利用しようとするものである。そして、人格者の弱みに付け込み、あたかも、親しい友人であるかのように振る舞い、周囲から同一視されることにより自分の株を上げようとする。人格者の人気にあやかり便乗しようとするのである。だから、人格者と目される人は、そういう不届き者に狙われやすいことを心得ておくのが肝要である。また、周囲の者も、本当の人格者なのか、まがい物なのかを、冷静な目で深く観察することが大事であるように思う。

   


風間草祐エッセイ集 目次


※風間草祐
工学博士(土木工学)。建設コンサルタント会社に勤務し、トンネル掘削など多数の大型インフラ工事に関わる傍ら、自由で洒脱な作風のエッセイストとしての執筆活動が注目される。著書に『ジジ&ババの気がつけば!50カ国制覇—働くシニアの愉快な旅日記』『ジジ&ババのこれぞ!世界旅の極意—ラオスには何もかもがそろっていますよ』『サラリーマンの君へ—父からの伝言—』『ジジ&ババの何とかかんとか!100ヵ国制覇』『すべては『少年ケニヤ』からはじまった: 書でたどる我が心の軌跡』『人生100年時代 私の活きるヒント』『風間草祐エッセイ集 社会編: —企業人として思うこと—』など。「社史」を完成した企業の記念講演の講師も受託する。【※「社史」に関して言えば、社員の仕事というものは必ずチームワークなのだから、協調性が保たれてこそ良い仕事ができるわけである。しかしメンバー各々は各々の考え方や価値観をもっているので、それがチームワークを阻害する場合は何らかの工夫が必要になるという話。そして一つひとつのの「達成」こそが小さな思いやりと協調の大切さを自覚させる機縁となって、人は成長していくのである。そのことが自ずと伝わる社史こそ良い社史であり、そういう会社こそ良い会社なのである。】