更新日 2026年2月15日
特に、自分が窮地に陥り不安になったたり、あるいは、どうしたものかと悩んだりしたときに心の拠り所になったというわけではないが、仕事を進めたり、日常生活を営む過程で、「なるほど」と思った言葉がある。「まさにその通りだと、腑に落ちた」と合点のいった言葉というものがある。その言葉を聞いて、「これが世の中の道理というものか」と感心したいくつかの言葉がある。
何でもそうであるが、何かを目論み、それを実行し成功に導くためには、外部要因として何があるかを見極めておくことが肝心である。その一方で、大概の仕事は、個人で請負うということはなく、複数の人間の集まった組織として取り組むので、内部要因としてチームワークが要求されるものである。
冒頭の言葉は、自分が30代の終わりに、母校で学位を取ろうという意志を固めて、同窓の7~8年先輩のところに相談に行った際、開口一番、その人から言われた言葉である。その先輩とは、南米で開かれた国際会議に論文を発表しに行ったときに、日本の訪問団としてめぐり逢い、以来、懇意にしてもらっていた。その先輩は、母校で非常勤講師も務めた経験があり、学科の卒業生として初めて東大で学位を取得した人で母校の教授陣からも一目置かれていた存在であった。「内堀は俺に任せて」というのは、学内は自分が説得できる自信があるという意味で、まさに、百人力を得た思いであった。
外堀というのは、学位のテーマに直接関連した分野の学界のことで、その分野の学外の専門家集団(主に他大学などのその分野の権威者)を意味していた。学会活動で名前が売れているか、一目置かれる存在になっているかということが大事で、学位を出す大学としては、学外からクレームが入り、ケチをつけられるのを一番嫌がるものであることを、その先輩は経験上よく知っていた。同じ土木という分野でも自分と専門の異なる先輩としては、そこまで手が届かないので、「そこは君が固めよ」と念を押したかったのである。内堀と外堀が埋まれば、後は、本人の努力次第で何とかなると踏んでいたのであろう。それから、その人の紹介で母校に赴き、指導教官から、論文の構成や内容のみならず、一字一句に至るまで、執拗に指導を受けたが、何とか足掛け4年でゴールにたどり着くことができた。
物事を成就させるには、成否を大きく左右するであろう外部環境(外的要素)と内部環境(内的要素)を詳(つまび)らかにして、隘路(あいろ)になるものは何かを突き止め、それを回避するための方策を予(あらかじ)め、スタディーしておくことである。特に、内部要因に関しては、自分の努力次第で解決できる場合もあるが、外部要因に関しては自分でコントロールできないことも多いので、相当程度、運不運が付きまとうことを肝に銘じておく必要があるように思う。
※風間草祐
工学博士(土木工学)。建設コンサルタント会社に勤務し、トンネル掘削など多数の大型インフラ工事に関わる傍ら、自由で洒脱な作風のエッセイストとしての執筆活動が注目される。著書に『ジジ&ババの気がつけば!50カ国制覇—働くシニアの愉快な旅日記』『ジジ&ババのこれぞ!世界旅の極意—ラオスには何もかもがそろっていますよ』『サラリーマンの君へ—父からの伝言—』『ジジ&ババの何とかかんとか!100ヵ国制覇』『すべては『少年ケニヤ』からはじまった: 書でたどる我が心の軌跡』『人生100年時代 私の活きるヒント』『風間草祐エッセイ集 社会編: —企業人として思うこと—』など。「社史」を完成した企業の記念講演の講師も受託する。【※「社史」や「記念誌」に関して言えば、内容の独自性や面白さはあったほうがいいが、それよりもむしろ業界内や学会内での体面や権威性を維持することを前提条件とする企業や団体は少なくない。制作会社としては、それはそれとして認めたうえで、なおかつ、そこからいくらか外れようとも、「こういう企画にした方がいいと思います」と提言することを怠ってはならない。】