自費出版-社史・記念誌、個人出版の牧歌舎

HOME > 社史編纂・記念誌制作 > 風間草祐エッセイ集 > 95.合点のいったあの言葉-その14- 

社史編纂・記念誌制作

風間草祐エッセイ集 社史とともに歩む社員の人生

95.合点のいったあの言葉-その14- 「芸は身を助ける」(ことわざ) 

更新日 2026年6月4日


   この言葉は、江戸時代に武士や町人が本業でない芸事(武士は剣術や弓術など、町人は歌舞伎や三味線など)を習得することが奨励されており、単なる趣味や道楽としてではなく、生活に困窮した際の収入源としていたとのことで、そのように本業でないことでお金を稼ぐことを表現したのが由来のようである。現代風にいえば副業ということになるが、「二足の草鞋」といえるような副業として生活の足しになるほどの「芸」を身に付けるのは容易ではないように思う。むしろ、現代のサラリーマンにとって、「芸は身を助ける」と感じるのは、金銭的な利益を得るというよりも、本業でない付随的なことで顔を売り人間関係を築くということなのではないだろうか。

 入社4年目、初めての海外出張でネパールに行ったことがあった。当時、カトマンズの事務所には所長を含めて先輩社員が3人勤務していた。着任早々、所長から言われたことは「君、麻雀できるか」ということだった。自分が入れば4人になるので、それを楽しみにしていたようであった。ところが、当時の同年輩のほとんどが学生時代に嗜んでいた麻雀を自分はやって来なかった。もともと、勝つにしろ負けるにしろ拘りが強い方なので、向きになるような勝負事は好きではなく、とても楽しめそうになかったので、あえて、習おうとは思わなかった。「囲碁も将棋もやらない」と応えると、所長は少し落胆した様子であった。そのときは、「仕事をしっかりやれば、文句を言われる筋合いはない」と思ったが、後々、海外現場は、ある種、閉鎖空間なので、そんな中で、ストレスを解消し、チームの和を保つのには、そういう娯楽も必要なことも分かり、相手ができる程度はやっておけばよかったと思った。

 同期の4歳年下の同僚は、祖父から教えてもらったということで囲碁ができた。麻雀は入社してから先輩社員から鴨にされながら覚えたようであったが、そのうちに嗜む程度はできるようになったようであった。社内には囲碁クラブがあり社内の上層部のメンバーが多く加入していた。昼休みになると和室の休憩室に何処からともなく社員が集まり、一極打つのが習慣になっていた。クラブの合宿などもあったようで、それらに顔を出すうちに、その同僚は、若手の中ではそれなりの腕前もあったので、仕事上は余り接点のない先輩社員の中にも、徐々に名前が知られるところになったようであった。退職後のOB会にも囲碁クラブがあるが、囲碁を通じたつきあいは、退職後も続いているようで、「芸は身を助ける」とはこういうことかと合点がいっている。

 自分の場合、現役時代、余り処世術みたいものを良しとしていなかったこともあり、「芸は身を助ける」という思いをしたことはほとんどなかった。唯一、あるとしたらゴルフ位である。ゴルフを始めたのは、30代半ば大病をした後、健康の為にと勧められたのがきっかけであった。当時、社内では部署ごとに所属長の冠の付いた〇〇杯なるものがあり、立場上、主催者側のため、出場するする必要があった。やむなく、定年まで続けたが、退職したときに、きっぱりやめた。いずれにしろ、芸がないからといって、それが付き合いが悪いという理由でハンディとなってはならない。あくまで、本業あっての副業であり、それを履き違えてはならないと思う。

 今は、退職後、生きがい大学で知り合った仲間と女房がオカリナサークルを楽しんでいるが、自分も、その昔、嗜んでいたギターを復活させ、伴奏役として仲間入りしている。これが、自分にとっての「芸は身を助ける」ということかと今にして感じている。


風間草祐エッセイ集 目次


※風間草祐
工学博士(土木工学)。建設コンサルタント会社に勤務し、トンネル掘削など多数の大型インフラ工事に関わる傍ら、自由で洒脱な作風のエッセイストとしての執筆活動が注目される。著書に『ジジ&ババの気がつけば!50カ国制覇—働くシニアの愉快な旅日記』『ジジ&ババのこれぞ!世界旅の極意—ラオスには何もかもがそろっていますよ』『サラリーマンの君へ—父からの伝言—』『ジジ&ババの何とかかんとか!100ヵ国制覇』『すべては『少年ケニヤ』からはじまった: 書でたどる我が心の軌跡』『人生100年時代 私の活きるヒント』『風間草祐エッセイ集 社会編: —企業人として思うこと—』など。「社史」を完成した企業の記念講演の講師も受託する。【※「社史」に関して言えば、社員の仕事というものは必ずチームワークなのだから、協調性が保たれてこそ良い仕事ができるわけである。しかしメンバー各々は各々の考え方や価値観をもっているので、それがチームワークを阻害する場合は何らかの工夫が必要になるという話。そして一つひとつのの「達成」こそが小さな思いやりと協調の大切さを自覚させる機縁となって、人は成長していくのである。そのことが自ずと伝わる社史こそ良い社史であり、そういう会社こそ良い会社なのである。】