状況内部の矛盾が新たな状況現出の契機になるとする弁証法は、世界の動きの本質をつかむ最も有効な方法論であり、歴史記述もその方法論の上で進められるのが最も当を得た基本手法である。
社史記述もそうした「歴史の弁証法的必然性」を承知した上で行われることにより、初めて理論的安定性と発展性を確保できるのであるが、その必然性を叡智によって洞察し、努力によって現実たらしめるのは企業[=人間]の「不屈の精神」であり、そこに社史のダイナミズムが現れる。そのように叙述するのが「良い社史」を書く要諦である。
何を頼りに社史を書いていくかを考えるとき、このように状況の「弁証法的発展」と人間の「不屈の精神」をよすがにするのが牧歌舎の基本的方式である。
企業のある状況は、ある試行の成果であり、いわばある環境下での理想的帰着であり得るが、やがて環境変化によって矛盾が生じ、これへの「人間的対応」によって次の状況に移行することになる。これは前状況の否定であると同時に、矛盾をも吸収して向上しているがゆえに前状況の否定の否定にもなっているのであって、形式論理を超えた発展であり、すべての歴史同様、社史もそのような発展の過程の記録であるべしと考えるのである。
この基本認識をしっかりとふまえて制作してこそ、社史は最大の説得力と人間的魅力をもちうる??牧歌舎は固くそう信じてやまない。