自費出版-社史・記念誌、個人出版の牧歌舎

社史編纂・記念誌制作

社史職人からのメッセージ

「刷り直し」の話

 「刷り直し」というのは、印刷をやり直すことです。当然、製本もやり直し、つまり出来上がった作品をすべて廃棄処分にして印刷製本をやり直すことです。発注側にとっても受注側にとっても最大の「あってはならないこと」です。

 この「あってはならないこと」を一度だけ体験したことがあります。

 30年近く社史作りをやってきますと、どういうところでミスが出やすいかは自ずと分かってきます。また、致命的なミスということも分かってきますので、お客様には「固有名詞と数字」には特に気を付けて確認していただくよう口を酸っぱくしてお願いしますし、校正ではあらゆる角度から徹底的な最終確認をしたうえで印刷に回します。

 しかし、私が体験した例では、最後に時間的な余裕が少しあったので、発注会社様も弊社編集者、校正者も通常よりさらに回数を加えて校正をしたのですが、にもかかわらず「あってはならないこと」が起こってしまったのです。

 それは、社史の本文ではなく、後付の「資料編」の中の一文字でした。

 本が完成した後、その中のミスを、あろうことか社長様が発見されたのです。

 それは、現社長の三代前の社長様のお名前で、「○○義男」となるべきところが「○○義雄」となっていたのです。社長様からそれを指摘された担当社員様(社史編纂委員会の委員長様でした)は驚いて資料を確認されましたが、その出典である当時の「事業報告書」では「義雄」となっています。資料が間違っていたのです。その資料といくら突き合わせて確認しても、避けようがないミスだったわけです。その元社長様は社長退任後は非常勤の相談役を努められたのですが、その退任後の株主総会のために作られた事業報告書に「退任役員」としてお名前が間違った字で載ったため、ご本人が確認されることがなかったわけです。

 そして、その元社長様が、現社長様が入社時から事ごとにお世話になってきた、いわば「最大の恩人」であったため、現社長様が「これを持って○○さんの所に行けない」と言われ、2000部以上も作った社史はすべて廃棄、改めて作り直しという結論になったものです。私どもは編纂委員長様に「貼り紙」(シール貼り訂正)や「切り替え」(その修正ページと裏ページを刷った1枚を元の1枚と入れ替えて糊付けする)などの対策を進言しましたが、現社長様から却下されてしまったとのことでした。

 「後世畏るべし」をもじった「校正畏るべし」は出版業界の常套語ですが、まさに何がミスにつながるか分かりません。いや、校正の頼りとなるべき辞書や事典ですら、初版本には必ず誤植や誤記があり、読者からの指摘を受けて第2版、第3版と版を重ねる中で訂正していくのですから、社史の資料にミスがあり得ることなど当然と言ってよいかもしれません。また、当然初版本である社史も、辞書や事典でさえある校正ミスがあって当たり前と言うこともできるでしょう。それでも、ミスは犯してはならないのが社史なのです。

 つまり、社史は、辞書や事典以上にチェック、校正しなければならない出版物なのだということを、この体験が私に教えてくれたのでした。

(編集制作担当 匿名希望)