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社史編纂・記念誌制作

社史職人からのメッセージ

色の見えかた —— カラープロファイルとキャリブレーション

 牧歌舎に入社して1年半ほどになる。前職はIT関連のドキュメンテーションの仕事に従事していた。

 ところで「社史」のほとんどには、社屋やランドマーク的な建造物、会長や社長、社員のポートレートなどが掲載され、高解像度、高画質の画像が扱われる。

 ソフトウェアのスクリーンショットや、人物といえばせいぜいハードウェアボタンやスイッチを操作する「手」の写真といった経験しかない私にとっては、全くの異世界だった。

 ある日、組版作業中に、モニター上のある写真が、他のスタッフのモニターではまったく異なって見えることがわかった。同じ人物が写る同一の写真であるにも関わらずである。
写っている方の表情は、私のモニター上では明るくにこやかであるのに、他のモニターでは青白く暗く、まるでご病気のように見えてしまうのだ。

 社史を制作する上で大きな問題の一つ、色の再現性について強く意識させられた。スタッフ間の同じ作業条件で、同じ写真が同じように見える。この当たり前の状態が実現できていなかったわけである。(注1)

 結局、私の作業環境に問題があることが分かり、カラーキャリブレーションという作業を行った。カラーキャリブレーションを理解するためには「プロファイル」を理解する必要がある。詳しいことを省いてざっくりまとめると以下の通りである。

・コンピューター、スキャナー、プリンターなどの電子機器で色を扱う際に色の見え方が一致するためにいくつかの規格が存在する。

・この規格に相当するものが「プロファイル」で、プロファイルは、CIE L* a* b* 色空間というスケールを使ってそれぞれの色を記述している(注2)。

・「プロファイル」には、プリンターやモニターなどの色を取り扱う機器やその用途によって、いくつかの種類が存在する。例えば、印刷のための汎用CMYKプロファイルであるJapan Color 2001 Coated、画面表示のための汎用RGBプロファイルであるAdobe RGB(1998)など。

・使用するモニターなどの物理的な個体差、また使用環境が色の見え方に影響しているため、専用のデバイスを使ったハードウェアキャリブレーションという方法でこの差を埋める。

 最後の点は、デジタル信号だけでは完結しない現実世界ならではの問題で、例えば、同一メーカー・同一モデルのモニターでも、ある個体ではなんとなく赤みがかっていたり、他方では逆に青みがかっているといったことは現実にはよくある。
ハードウェアキャリブレーションでは、専用の機器を使って直接デバイスから出力される色を取得する。

 キャリブレーション専用機器は、モニターに吊り下げて使用され、色の違いをデジタル信号として送信するためのセンサーを備えており、その信号を、USBなどのインターフェイスを介してキャリブレーション用アプリケーションが受信する。アプリケーションはデバイスから受け取った情報から、個別のプロファイルを生成・更新する。生成・更新されたプロファイルは作業環境のストレージに保存される。

 牧歌舎のDTP作業はすべて上記のカラーキャリブレーション作業から生成されたプロファイルにもとづいて行われている。

 関連して、避けて通れない課題が、印刷物における色とモニター上に表示される色の違いだが、また機会を改めて考えたい。

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注1)
「スタッフ間で」と一言で言っても、牧歌舎は東京と兵庫にまたがってオフィスがあり、また協力会社様に印刷・製本をお願いしているため、事情は複雑である。また校正をお願いするお客様と牧歌舎の間の問題もあるが、ひとまず話を進める。

注2)
CIE L* a* b* とは、一種の色空間と呼ばれ、明度軸L、補色軸a、bを使って現実世界のすべての色を記述できるとされる3次元尺度。
L軸は0~100の刻みで明るさを示し、a軸はグリーンからマゼンタの範囲を、b軸はブルーからイエローの範囲を示す。
なお、名称に含まれるアスタリスク(*)は、この尺度を旧バージョンと区別するための識別子となっている。
”Lab color space”(Psychology Wiki)
https://psychology.wikia.org/wiki/Lab_color_space (referred to on Oct.30 in 2021)

参考文献
柳田寛之, DTP 印刷 デザインの基本, 玄光社, 2014



(DTPデザイナー MT)

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