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社史編纂・記念誌制作

社史職人からのメッセージ

資料集めで社史の姿が見えてくる

 社史を制作するにあたり、最初の大きな手間のかかる作業に資料集めがある。
 創業から現在までの期間が長ければ長いほど、歴史を追うためのすべての資料を揃えることは難しくなってくる。戦争や震災などで焼け落ちてしまうこともあれば、事務所の移転などの際に、ごっそり捨てられてしまうケースも少なくない。
 通常揃えられる資料が見つからない場合は、OBに声をかけて手元にないか確認してもらう。社内報などを大事に保管している場合もあれば、退職時などに会社の資料を自分の仕事の記録として自宅に持ち帰っていることがある。または創業者が故人となったときに、親族が関係資料を捨てずに、会社から遠く離れた雪国の創業者実家の蔵に入れていて、それを社史編纂担当者が掘り起こしてきたということもあった。

   蔵から出てきたのは会社の正式な報告書や議事録、写真だったので、それらは信頼性の高い一次史料になると思われたが、別の会社の例ではメモ書き程度のものや日付のわからないものなど、信頼性の低いものばかりだったこともある。そして現物資料の次に考えられるのが、社員や関係者からのヒアリングがある。ヒアリングは資料の補完的役割となるので、聞くべき点はある程度明確にしてピンポイントで話を伺い、見えなかった歴史の一部を紡いだり、情報の薄い部分の肉付けをしていく。資料が少なければヒアリングに頼らざるを得ないのだが、人間の記憶には多くの誤りや思い込みがあり、かなり慎重に文章へと反映させていく必要がある。そのために、同時期に在籍していた社員複数に聞いておくと、より信憑性は高まるだろう。

 しかし以前、資料不足のために創業から50年間の歴史すべてをヒアリングでまとめるという会社があった。ヒアリングしたのは創業から一代で会社を大きく築き上げたという社長様で、80歳を過ぎても元気な創業者の意見は社内で絶対であり、かなりご本人の思い入れが色濃く表れたものとなった。自分が立ち上げ、苦労してここまできたのだから当然なのだが、客観性が薄れてくるので、その時点で社史ではなく個人史の体となった。ヒアリングには毎回5時間程度が要され、ライターともども疲弊しながら話を聞いた記憶がある。

 このように、一口に資料集めといっても、得られる情報の質によって、社史の内容はいかようにも変わるものだと、改めて実感した。

(編集MK)

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