長寿企業の共通点は「企業の価値を資産でなく人間(経営者、従業員とも)に置いていることである。これはまさに注目に値する。「事業は人なり」——の印象のある社史に。
(東京本部 スタッフライター 若山三郎〈作家〉)
(追記)若山先生は昭和6年のお生まれで、戦後は日本企業や駐留米軍で通訳を務めながら小説を執筆され、昭和30年代半ばから大衆小説で大ブレーク。以後は米軍通訳を辞めて作家活動に専念し、作品数は300以上にも上ります。特に『お嬢さんお手をどうぞ』『お嬢さんは恋愛参謀』などの明朗小説お嬢さんシリーズは大ヒットし、『お嬢さん待ってます』『お嬢さんと腕力学生』『お嬢さんは婚約中』『お嬢さんの冒険』『お嬢さんと茶目紳士』『お嬢さんは意地っぱり』『お嬢さんは江戸っ子娘』『お嬢さんは喧嘩好き』『お嬢さんはお目が高い』『お嬢さんは恋愛主義者』『お嬢さん御免あそばせ』『お嬢さんとドラ息子』『お嬢さんと一等社員』『お嬢さんの求愛作戦』『お嬢さんの恋愛修業』『お嬢さんはガンコ者』『おてんばお嬢さん』『お嬢さんに乾杯! 』『お嬢さん社長』『お嬢さんは脱線好き』『お嬢さんは適齢期』などは「春陽文庫」で大人気となって高度成長期の日本社会に広く迎え入れられました。その後、「お嬢さんシリーズ」はしばらく途絶えますが、昭和末期のバブル時代から復活。『お嬢さんは名探偵』『お嬢さんは探偵好き 』『お嬢さんの探偵修業』『お嬢さんの探偵旅行』『お嬢さんの探偵メモ』などの探偵ものが発表されました。
作家活動の後期には、伝記や企業関係の作品が増え、『人類をすくった“カミナリおやじ" 信念と努力の人生・北里柴三郎』『政商 大倉財閥を創った男』『セイコー王国を築いた男 小説・服部金太郎』『人われを事業の鬼と呼ぶ 浅野財閥を創った男』『菓子づくりに愛をこめて お菓子の王さま・森永太一郎』『東武王国 小説根津嘉一郎 』『村をうるおした命の水 箱根用水をつくった人々の技術と熱意の記録』『信長流逆転の急所 四面楚歌、窮した時どうする』などが残されています。
牧歌舎では記念誌のご執筆などで大変お世話になりましたが、平成21年10月1日、78歳で逝去されました。
記念誌の原稿作成ではいろいろとご無理もお願いしましたが、いつも何事にもこだわらない飄々としたスタイルで、小柄ながら常に春風駘蕩の大人の風を崩さず、気さくにニコニコと接してくださった温容が忘れられません。
「事業は人なり」——このお言葉に、何度も反芻すべき重みを感じます。