何でもかでも市場経済化することが正しいかのように言う「文化人」がこのごろ多い。しかしそう言う人間に限って、官僚やマスコミが責任を果たしていないことを言いつのるのである。もし市場経済が普遍的に正しいものなのだとしたら、官僚やマスコミも市場経済化することが正しいのではないか。市場経済の論理にのっとり、官僚はなるべく多くの報酬を得てなるべく少なく働くことをめざすべきであり、自分の利益を何ものにも優先させる行動をとるべきということになる。マスコミはとにかく営業第一で、情報を大向こう受けするように選択・脚色して流せば、それが正しいのだということにもなる。
市場経済は万能ではない。むしろ、いうまでもなく、人間にとって必要であり貴重なものを、市場経済がこわしてきた例は枚挙にいとまないのである。
官僚やマスコミや教育者たちの「市場経済化」を否定するのなら、それは直ちに市場経済への疑義であるはずである。それを言わないということは、「文化人」の、これもまた市場経済化なのかもしれない。
1997.06.01