日本人の特性ということを挙げたらいくつもあるだろうが、中でもリマーカブルなものは地域的結束、地縁的紐帯だろう。精神的な互助的つながりは、むろんいくつかの矛盾は宿しながらも、社会原理の最大根本的のものとして強固にあった。そしてそれは最終的には冷酷な掟が保持したにせよ、その掟を守ろうと集団のルールを是認した者同士においては「温かさ」として深く自覚されるものだった。
戦後の最大の変化は、そうした「紐帯」の解体である。これは、ひょっとするとまたある意味において復活してくる可能性がある。良かれ悪しかれ存在した旧理念が良かれ悪しかれ崩壊した、その過程を検証するのはレトロ趣味というものではなく、建設的な作業であろう。
1999.03.05