私が子供のころ、昭和20年代?30年代の大人というものは、その辺の道を歩いていたりしても、たいていはしかめ面をしていたものである。屈託の空気が巷に色濃く流れていたのだ。また、今では笑いぐさにすぎない食事時の「ちゃぶ台返し」も現実一般のものであり、夫婦げんかで茶碗が飛ぶのはいわば普通のことだった。今ではそのような一般的屈託や食器を投げる習慣は消滅している。時代の変化、世相の変化というものは、じつはそんなところにあるのだが、もはやだれも覚えてはいない。歴史を知るということは、ことほど左様に難しいのである。
2000.07.18