団地の周りでばったり出会って、こちらに駆けてくるチコすけ。そんな時のチコすけの目はまん丸だ。また、家の中にいて、お腹もいっぱい、愛情いっぱいの雰囲気の中にいて、満ち足りているときの目もまん丸だ。満ち足りすぎて、うれしくて、足りないものがないのにとまどうような幸せなとき、チコすけの目は本当に邪気のないまん丸だ。
母親の夢を見て、目覚めて淋しくて、そこで撫でてもらうときの目は、もっとなにかの思いがこもっていて、少し細めてクルミ型になる。クルミ型の、少し薄くしたような、細めたような目で、黒目だけになって黒ダイヤのように輝いている。その輝きの源は愛情である。愛情への感動である。
野生動物は、心に本能的な寂しさを宿している。夜の草原を行く風のような、宿命的な寂しさが彼らのアイデンティティーである。そのような彼らの心に愛情をそそぐ。チコすけの本能的な寂しさに愛情の暖かさをそそぐ。そんなとき、チコすけの目は細められたクルミ型になり、黒ダイヤの奥深いきらめきに満ちるのだ。
1998.11.21